「経理は自分たちでやるもの。外注なんて、うちの規模じゃまだ早い」
そう考えている夫婦経営・家族経営の飲食店オーナーの方、その判断は本当に正しいでしょうか?
夜11時。お店の片付けを終えて、ようやく一息つける時間。でも、目の前には今日分のレシートの山。「明日まとめてやろう」と思いながら、結局1週間分、2週間分と溜まっていく。月末になると、テーブルいっぱいに広がったレシートと請求書を前に、夫婦で黙々と仕分け作業──。
こんな光景に心当たりはありませんか?
飲食店ドットコムが実施したアンケート調査によると、飲食店経営者の約8割が「月に6日以下」の休日で働いているという結果が出ています。限られた休みの中で、経理業務にどれだけの時間を費やしているでしょうか。
この記事では、「経理を内製し続けるべき店」と「外注した方が得な店」の分岐点を、具体的な判断基準とともにお伝えします。
結論を先にお伝えすると、「外注した方がいい」とは言いません。あなたのお店にとっての正解を、あなた自身が判断できるようになることが大切だと考えています。
この記事でわかること
- 経理を内製し続けた方が良い店の3つの条件
- 外注を検討すべき店の3つの条件
- 「社長の時給」という判断軸の考え方と具体的な計算方法
- 外注先の種類と費用相場の目安
- 外注を検討する前にやっておくべき準備
「経理は自分でやるもの」という思い込みを点検する
夫婦経営店の経理、誰が担当していますか?
夫婦経営の飲食店では、経理を奥様(または旦那様)が担当しているケースが圧倒的に多いものです。
「税理士に頼んでいるから大丈夫」と思っていても、実は毎月の記帳作業、レシートの整理、請求書の管理、仕入れ代金の支払い確認など、日々の経理業務は自分たちでこなしているというお店がほとんどではないでしょうか。
これには理由があります。
- 「お金のことは自分の目で確認したい」
外部に任せると、何にいくら使っているか把握しづらくなる不安がある - 「外注するほどの規模じゃない」
年商3,000万〜1億円程度では、まだ早いと感じている - 「コストをかけたくない」
利益が薄い中で、さらに経費を増やすことに抵抗がある - 「何をどこまで任せればいいかわからない」
外注の仕組み自体がよく分からず、一歩が踏み出せない
どれも正しい考えです。しかし、ここで一つ確認していただきたいことがあります。
◉ 確認してほしい2つの質問
- その経理業務に、毎月何時間かかっていますか?
- その時間は「経営者の仕事」として適切な時間の使い方ですか?
データが示す「外注活用」の効果
中小企業庁の「2022年版小規模企業白書」では、アウトソーシングに取り組むことで、売上げや新たな取引先・人脈を広げるなどの効果が見て取れると報告されています。
また同白書では、アウトソーシングに取り組んでいる分野別に見た効果について、経理・財務や総務・庶務においては、「コストを削減することができた」との回答割合が高かったことも示されています。
📖 出典:🔗 中小企業庁 |「2022年版 小規模企業白書」第2部第1章第2節
※ コラム2-1-1:アウトソーシングの活用 参照
もちろん、「外注すれば必ずうまくいく」と断言するつもりはありません。大切にしていただきたいのは、「今の自分たちの時間の使い方は最適か」を冷静に見直すことです。
【判断基準①】経理を内製し続けた方が良い店の3つの条件
最初に、経理を内製し続けた方が良いケースを整理します。以下の3つの条件に当てはまる場合は、無理に外注する必要はありません。
条件①:月の伝票枚数が100枚以下で処理がシンプル
取引先が少なく、現金商売がメインで、仕入れも週に数回程度。
そんなシンプルな取引形態であれば、経理業務の負担は比較的軽いはずです。
目安として、月の伝票(領収書・請求書含む)が100枚以下であれば、週に1〜2時間程度で処理できることが多いでしょう。
- 年商3,000万〜5,000万円規模
- 仕入れ先が5社以内
- クレジットカード決済・電子マネーの比率が低い
- 売掛金(ツケ払い)がほとんどない
このような状況であれば、会計ソフト(弥生会計やfreeeなど)を使いながら自分たちで処理しても、それほど大きな負担にはならないでしょう。
条件②:経理担当者が業務を楽しんでいる(または苦にならない)
「数字を見るのが好き」「帳簿がきれいに揃うと気持ちいい」という方もいらっしゃいます。
経理が「やらされ仕事」ではなく、お店の状態を把握するための前向きな作業になっているなら、それは大きな強みです。
- 奥様(または旦那様)が簿記の資格をお持ち
- 以前、経理職や事務職の経験がある
- 数字を扱う作業が元々好き
- 自分でやった方が確実に早い
このような方が経理を担当しているなら、外注するメリットは限定的かもしれません。むしろ、「外注先とのやりとり」という新たな業務が発生することで、かえって面倒に感じる可能性もあります。
条件③:経営数字を「見て・考えて・行動する」習慣がある
経理業務を通じて「今月は仕入れが多かったな」「人件費が上がっている」と気づき、翌月の経営に活かせている。
こうした「数字を見て、考えて、行動する」サイクルが回っているなら、経理を手放す必要はありません。むしろ、内製することで経営感覚が磨かれているといえます。
経理を自分でやるメリットの一つは、お金の流れを「肌感覚」で把握できることです。レシートを1枚1枚見ながら「あ、この仕入れ高かったな」「今週は食材ロスが多かったかも」と振り返ることで、経営改善のヒントが見えてくることがあります。
【判断基準②】外注した方が得な店の3つの条件
次に、外注を検討した方が良いケースを見ていきましょう。
条件①:経理に月10時間以上かかっている
レシート整理、記帳、請求書の管理、支払い確認、税理士への資料提出…
これらを合計すると、月に10時間以上かかっていませんか?
「そんなにかかっていない」と思う方も、一度細かく計算してみてください。
◉ 経理業務の時間、実は意外とかかっている
- 毎日のレジ締め・売上記録:15分/日 × 25日 = 約6時間
- レシート・領収書の整理:週30分 × 4週 = 2時間
- 会計ソフトへの入力:月2〜3時間
- 請求書の確認・支払い処理:月1〜2時間
- 税理士への資料まとめ:月1時間
⇒ 合計:月12〜14時間程度
これを年間に換算すると、どうなるでしょうか。
- 月12時間 × 12ヶ月 = 年間144時間
- 1日8時間労働で換算すると、約18営業日分
- つまり、約1ヶ月弱の労働時間を経理に費やしている
この時間を「お客様に向き合う時間」「新メニューの開発」「スタッフの育成」「販促活動」に使えたらどうでしょうか。
条件②:経理業務が「溜まる」傾向がある
「月末にまとめてやろう」と思っていたら、気づけば2〜3ヶ月分のレシートが溜まっている。
このパターンに心当たりがある方は要注意です。経理が溜まると、以下のような問題が連鎖的に発生します。
- 税理士への提出が遅れる → 試算表の作成も遅れる
- 経営数字の把握が後手に回る → 問題に気づくのが遅くなる
- 「数字を見ても、もう手遅れ」という状態になりがち
- 確定申告・決算期に地獄を見る
飲食店経営では、キャッシュフロー管理が命綱です。「今、お金がいくらあるのか」「来月の支払いに対応できるのか」を常に把握しておく必要があります。
経理が溜まって数字の把握が遅れることは、資金繰りのリスクに直結します。「気づいたら口座残高が足りなかった」という事態を防ぐためにも、経理業務は溜めないことが鉄則です。
もし「どうしても溜まってしまう」という状態が続いているなら、それは「今のやり方が自分たちに合っていない」というサインかもしれません。
条件③:経理が夫婦間のストレス源になっている
「ちゃんと領収書もらってきた?」
「この出費、何に使ったの?」
「なんで今月こんなに仕入れ多いの?」
経理をきっかけに険悪なムードになった経験はありませんか?
夫婦で経営している飲食店にとって、二人の関係性は店の雰囲気に直結します。お客様は意外と敏感で、夫婦の空気がギクシャクしていると、それはサービスや店の雰囲気に表れてしまうものです。
経理が原因で関係が悪化するなら、第三者に任せることで「夫婦の時間」を取り戻せる可能性があります。お金の話を第三者を挟んですることで、感情的にならずに済むというメリットもあります。

判断の決め手:「社長の時給」という考え方

内製か外注かを判断する上で、最も重要な視点が「社長の時給」です。
経営者であるあなたの1時間には、いくらの価値がありますか?
「そんなこと考えたことがない」という方も多いかもしれません。でも、この考え方を持つことで、時間の使い方が大きく変わります。
「社長の時給」の計算方法
計算方法はシンプルです。「目標とする年間利益(または報酬)」÷「年間の労働時間」で算出します。
◉ 計算例①:年収500万円を目指す場合
年間労働時間を2,500時間(週50時間×50週)とすると、
500万円 ÷ 2,500時間 = 時給2,000円
◉ 計算例②:年収700万円を目指す場合
年間労働時間を2,500時間とすると、
700万円 ÷ 2,500時間 = 時給2,800円
つまり、あなたの1時間は少なくとも2,000〜3,000円以上の価値を生み出す必要があるということです。
ちなみに、一般的な飲食店の「人時売上高」(1人が1時間で生み出す売上)の平均値は、3,000〜4,000円程度と言われています。経営者の時間は、それを上回る価値を生み出すべき時間であるべきす。
経理外注の費用と比較してみる
一方で、記帳代行や経理代行の費用相場はどうでしょうか。
弥生株式会社の調査によると、記帳代行の料金は1仕訳あたり50〜100円が相場とされています。また、小規模事業者向けの記帳代行では月額5,000円〜10,000円程度から依頼できるケースもあります。
📖 出典:🔗 弥生株式会社「記帳代行の料金相場」
◉ 小規模飲食店の記帳代行費用の目安
| サービス内容 | 費用目安(月額) |
|---|---|
| 記帳代行のみ(仕訳数100件以下) | 5,000円〜10,000円 |
| 記帳代行のみ(仕訳数100〜200件) | 10,000円〜20,000円 |
| 経理業務全般(給与計算含む) | 30,000円〜50,000円 |
※ 上記はあくまで目安です。事業の規模や従業員数、依頼する業務内容などにより費用は変わります。
本当に考えるべきこと
仮に月3万円で月12時間の経理業務を外注できるとしたら、
3万円 ÷ 12時間 = 時給2,500円
ここで考えるべきは、「その12時間を使って、3万円以上の価値を生み出せるか?」ということです。
12時間あれば、こんなことができます。
- 新規のお客様を獲得するための営業活動
- リピーターを増やすための施策検討と実行
- メニュー開発や原価の見直し
- スタッフの教育やシフト最適化
- 設備のメンテナンスや店舗の清掃
- SNSでの情報発信
- 休息をとって、翌日のパフォーマンスを上げる
これらは「経営者にしかできない」または「経営者自身で実行すると効果的」な取組みであり、お店の売上や利益に直結する可能性が高い時間の使い方です。
経理の外注先、どんな選択肢がある?

「外注を検討してみようかな」と思った方のために、主な外注先の種類と特徴を整理します。
選択肢①:税理士・会計事務所
最も一般的な依頼先として、まず考えられるのが税理士事務所です。
すでに顧問契約をしている税理士がいる場合、まずは相談してみることをおすすめします。記帳代行や税務申告以外の業務についても、追加オプションとして対応してくれる事務所もあります。
- メリット:税務申告まで一貫して任せられる、経営アドバイスも受けられる
- デメリット:費用がやや高め、対応範囲が限られる場合も
選択肢②:経理代行会社(アウトソーシング会社)
経理業務を専門に代行する会社です。
記帳だけでなく、請求書発行、入金管理、給与計算など幅広い業務に対応している会社もあります。
- メリット:柔軟な対応、比較的リーズナブル、ノウハウが豊富
- デメリット:税務申告や税務相談は対応不可(税理士と提携している会社を選ぶ必要あり)
選択肢③:クラウドソーシング・フリーランス
経理経験者やフリーランスの税理士に個別に依頼する方法です。
クラウドワークスやランサーズなどのサービスを通じて見つけることができます。
- メリット:費用を抑えやすい、柔軟な対応が可能
- デメリット:品質にばらつきがある、長期的な信頼関係構築が難しい場合も
💡 外注先選びのポイント
どの選択肢が良いかは、お店の状況やニーズによって異なります。まずは「何を」「どこまで」任せたいのかを明確にしてから、複数の業者に相談・見積もりを取ることをおすすめします。
外注を検討する前にやるべき1つの準備

「よし、外注を検討しよう」と思った方に、一つだけお伝えしたいことがあります。
それは、外注する前に「自店の経理業務を棚卸し」することです。
事前の整理なくいきなり外注先に相談しても、「結局うちは何を任せればいいんだろう?」「どこからどこまでが自分の仕事になるの?」と迷ってしまいます。
経理業務の棚卸しチェックリスト
以下の項目を、紙やスプレッドシートに書き出してみてください。
◉ 棚卸しの5項目
- 毎日やっている作業
(例)レジ締め、売上記録、現金管理、POSデータの確認 - 週単位でやっている作業
(例)仕入れ代金の支払い確認、請求書の受領チェック、領収書の整理 - 月単位でやっている作業
(例)会計ソフトへの記帳、請求書発行、税理士への資料提出、給与計算 - 年単位でやっている作業
(例)年末調整、確定申告の準備、実地棚卸 - それぞれにかかっている時間の目安
(例)レジ締め30分/日、記帳5時間/月、請求書整理2時間/月 など
事前に棚卸しをするメリット
- 外注先との相談がスムーズになる
→「これを月○時間でやってほしい」と具体的に伝えられる - 見積もりの精度が上がる
→ 業務量が明確になるため、適正な費用がわかる - 「これは自分でやりたい」という線引きがしやすくなる
- 外注後のトラブル防止になる
→「言った・言わない」を避けられる
⚠️ 重要なポイント
外注とは「丸投げ」ではありません。「任せるべきこと」と「自分でやるべきこと」を整理することが、成功の第一歩です。
まとめ:正解は「どちらか」ではなく「今の自店に合うか」
経理の内製と外注、どちらが正解かは一概には言えません。
大切なのは、「今の自分のお店にとって、どちらが合っているか」を判断することです。
判断基準のおさらい
【内製を続けた方が良い店】
- 月の伝票枚数が100枚以下で処理がシンプル
- 経理担当者が業務を苦にしていない(むしろ楽しんでいる)
- 経営数字を「見て・考えて・行動する」習慣がある
【外注を検討すべき店】
- 経理に月10時間以上かかっている
- 経理業務が溜まりがち
- 経理が夫婦間のストレス源になっている
そして、「社長の時給」を計算してみてください。あなたの時間を、より価値の高い仕事に使うべきかどうかが見えてくるはずです。
どちらを選ぶにしても、大切なのは「意図を持って選ぶ」ことです。「なんとなく今まで通り」ではなく、「こういう理由で内製を続ける」「こういう理由で外注を選ぶ」と言えるようになることが、経営者としての一歩前進です。
「うちの場合はどうだろう?」と思ったら
ここまでお読みいただいた方の中には、「で、結局うちはどうすればいいの?」とモヤモヤしている方もいらっしゃるかもしれません。
「記事を読んだけど、自分のお店がどちらに当てはまるかわからない」
「外注した場合の費用感を具体的に知りたい」
「まずは業務の棚卸しから手伝ってほしい」
この記事では、あえて「外注すべき」とも「内製を続けるべき」とも断言しませんでした。
それは、正解がお店ごとに違うからです。
ただ、一つだけ確実に言えるのは、「判断を先延ばしにすること」が一番もったいない、ということです。
もし判断材料が足りないと感じているなら、お気軽にご相談ください。
当社は「こうすべき」を押し付けるのではなく、あなたが納得して決断できるよう、判断材料を整理するお手伝いをしています。
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この記事のポイント
- 経理の内製・外注は「どちらが正解」ではなく「自店に合うか」で判断
- 内製継続の条件:伝票100枚以下、担当者が苦にしない、数字を経営に活かしている
- 外注検討の条件:月10時間以上、業務が溜まる、夫婦間のストレス源
- 「社長の時給」を計算し、時間の価値を数値化して判断する
- 外注前に「経理業務の棚卸し」で何を任せるかを明確にする
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