
はじめに:厳しい飲食店経営と固定費削減の必要性

飲食業界は、原材料費の高騰、毎年上がる人件費、そして競争激化といった複数の課題に直面しています。そんな経済状況下では特に、売上の変動に左右されづらい経費である「固定費」が高い店舗は、わずかな売上減少によってでも赤字転落のリスクが高まります。そこで、安定経営のため損益分岐点を下げるには、まず固定費を徹底的に見直すことが不可欠です。
固定費削減を実現すれば、キャッシュフローの改善はもちろん、急激な売上減少時にも耐えうる経営基盤の構築が可能になります。
この記事では、飲食店経営における固定費の具体的な見直し方と、損益分岐点を下げて収益性を向上させるための具体的なテクニックを、分かりやすく解説します。
固定費と変動費の基本理解
固定費とは何か?
固定費とは、売上高や来客数にかかわらず、毎月一定額発生する費用のことで、お店の売り上げがゼロであっても必ず発生します。
具体的には、家賃・地代、社員人件費、設備リース料、固定契約の販促費、保険料などが該当します。これらは、店舗の運営基盤を支えるために支出する大切な費用ですが、元々の契約条件によって決まっていることがほとんどのため、短期的な見直しが難しいという点が特徴です。
売り上げに対して最適な割合に抑えることが経営安定化の鍵となります。
変動費とは何か?
一方、変動費は売上高や客数に応じて増えたり減ったりする費用です。
例として、食材費、人件費(アルバイト・パート分)、消耗品費などが挙げられます。
売上が増えれば当然増加しますが、経費削減の対象としては、無駄な在庫の削減やポーション(盛り付け)の適正化、効率的なシフト管理などにより改善可能となります。
損益分岐点売上高の計算方法
損益分岐点売上高とは、【売上高】と【総費用(=固定費+変動費)】が一致し、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。つまり、ここを超えれば黒字、下回れば赤字となる売上高のことを指します。
この損益分岐点売上高は、以下の式で求めることができます。
- 変動費率は、売上に対する変動費の割合です。
- 例:月間売上が100万円、変動費が40万円の場合、変動費率は40%(0.4)となります。
- [1-変動費率]で導かれる数値を「限界利益率」と呼び、上記の式を
- [ 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 ]
- とまとめることもあります。
計算手順(月単位・年単位など対象期間を揃えて)
- お店の「固定費」を算出する
- 例)物件賃料+厨房機器リース料+社員給与+火災保険料=75万円/月
- お店の「変動費」を算出する
- 例)原材料費+包装資材費+パート・アルバイト賃金+水道光熱費+通信費=120万円/月
- お店の「売上高」を確認する
- 例)月商=200万円
- 変動費率を計算する
- 例)変動費÷売上高=120万円÷200万円=0.6(=60%)
- 「損益分岐点売上高」の計算式にそれぞれ当てはめ計算する
- 例)固定費÷(1-変動費率)=75万円÷(1-0.6)=187.5万円
固定費・変動費は低いほど、必要となる売上が低くなり利益を出しやすい状況に近づきます。どちらもテコ入れできれば損益分岐点売上高の切り下げに効果はありますが、経営の安定化を図る上では、まず固定費の切り下げに着目することが効果的です。
数年前の新型コロナウイルスの感染拡大期に多くの店が休業を強いられた際、固定費負担が飲食店経営にいかに負担となっているのか広く認知されました。休業中、材料費など変動費の負担がなくなる一方で、家賃やリース料といった固定費は変わらず負担しなくてはなりませんでした。
つまり、固定費は売上に依存しない出費であるため、これを削減することは経営の基盤そのものを大きく改善します。固定費が減ると毎月一定の支出が少なくなるので、資金繰りの負担も軽くなるという訳です。
加えて、固定費削減の方が損益分岐点売上高を下げる効果が高いという特徴もあります。
上記例の場合、固定費が10万円下がった場合の損益分岐点売上高は162.5万円、変動費が同じく10万円下がった場合の損益分岐点売上高は166.6万円となり、固定費切り下げの方が、損益分岐点売上高の低減効果が4万円強高い結果となります。
損益分岐点を下げる固定費削減の実践テクニック
ここからは、飲食店の固定費を削減する具体的な方法を解説していきます。ポイントは、単に「削る」だけでなく、経営全体を見渡して最適化を図ることです。
(1) 家賃交渉・移転でコストダウン

飲食店にとって家賃は、固定費の中でも大きな割合を占める場合が多い項目。
適正な売上が見込めるのであれば問題はありませんが、売上に見合わない家賃を支払っている場合は、家賃交渉や場合によっては思い切った移転を検討する価値があります。
家賃交渉の進め方
◆ 家賃交渉を”実行”する
「何を言っているのか?」と思われるかもしれませんが、コンサルタントとして活動する中で、定期的に大家さんとの家賃交渉を実行していない会社・お店に頻繁に出会います。
理由をたずねると「『家賃を交渉する』という認識がそもそも無かった」という答えが多いです。
家賃は定期的に見直し、「大家さんと交渉して当たり前」という理解を、まずは前提として持ちあわせましょう。
◆ 契約更新時期を狙う
契約更新のタイミングは家賃交渉において最も有利な時期です。
締結している賃貸借契約には、契約期間や契約更新について定めた条項が必ず設けられているはずです。次の契約更新のタイミングがいつなのか事前に確認しておきましょう。
また、継続して長く借りている場合は、大家さんに対して実績や店舗の業績を示しつつ、減額を打診しましょう。
◆ 周辺相場と比較する
賃貸期間などの実績のほか、近隣テナントや同エリアの平均家賃と比較したデータを示し、根拠を明確に伝えることも大切です。
移転という選択肢
◆ 客足が見込める立地か?
安い物件に移転しても、客足が激減して売上が下がりすぎては本末転倒です。飲食店成功の可否を決める要素は「立地が8割」です。移転先物件の調査は綿密に行いましょう。
決して費用面の条件だけで決断せず、「お店が接続する道路の質」や「物件の地形や視認性」「商圏人口」など、集客に直接影響する要素を重要視して検討してください。
◆ 移転費用の回収を考える
移転には引っ越しや内装工事などの初期投資が発生します。かかる投資額について回収期間を考慮したうえで移転を決断しましょう。
大家さんとの交渉は心理的ハードルが高い面もありますが、家賃が高すぎて経営が回らなくなるリスクを考えれば、適切なタイミングでの交渉・移転検討は極めて重要な選択肢です。
(2) 人件費の最適化

人件費は飲食店にとって不可欠な投資ですが、シフトによって働くパート・アルバイト従業員が占める割合の多い飲食店では、無駄やムラが生じやすいのも事実です。
パート・アルバイト分の人件費は「変動費」と紹介しましたが、曜日や時間帯ごとの柔軟なシフト調整が出来ず、実質固定費化してしまっているお店も多いかと思います。
スタッフがどの時間帯にどれだけ必要かを見直し、適正配置を行うことで固定費化した人件費を適度にコントロールできます。
シフト管理の徹底
◆ 売上予測・予約状況に基づいたシフト組み
過去の売上データや予約状況を分析し、繁忙期・閑散期ごとにシフトを最適化します。曜日別の「時間帯別損益計算書」を作成し、各曜日の1時間毎の損益を把握しておくと適切なシフト組みがしやすくなります。
◆ ピークタイムに集中配置し、アイドルタイムに削減
客数のバランスを見て、必要以上にスタッフを配置しないように気をつけましょう。「Aさんは○○時~△△時までの勤務」という出勤情報を一覧にまとめたシフト表をよく見ますが、そのほかに、担当者別・時間帯別の「作業割り当て表」を作成し、いつ・誰が・何をするのか、整理しておき過剰な配置を防ぐ方法がおすすめです。
◆ 手待ち時間の作業割り当てと早上がり手当
「シフトを決めて従業員に出勤してもらったが、急な大雨で予想外に暇になってしまった」など、思いがけず予想より来客数が少ない日や時間に遭遇するケースがあります。
この様なケースでは、従業員にやってもらう作業を第二優先・第三優先のものまで決めておく「手待ち時間の作業割り当て」を事前にしておくと、折角の人件費が無駄にならなくなります。
通常ホールのオペレーション全般をお願いしているのなら、暇で手待ちになったときには第二優先のイス・テーブルの清掃を、それも終わったら更に第三優先のバックヤードの片付けをしてもらう、といった具合です。
その他、状況に応じて「早上がり」してもらえる仕組み作りも有効です。
導入経験のある実例として、早上がりに応じてくれた場合に、早退対象となった勤務予定時間に対して時給の半額を支給する「早上がり手当」という仕組みを紹介します。1
- 雇用契約内容や早退対象の時間数、その日の賃金支払総額などによって、休業手当の支払いが必要となる場合があります。実際に導入する際には、事前に社労士の先生などへご相談ください。
↩︎
パート・アルバイト従業員の方も、基本的に稼ぐために出勤していますので、「暇だから」とただ早く帰されてはその日の稼ぎが無くなってしまいます。そのため「早上がり」をよく思わない方も多くいらっしゃるのが実状です。
そこで、店側の事情と働く側の事情を織り込んだ「早上がり手当」を導入します。
お店側は暇な時の人件費が普段の負担よりは下がり、働く側は何もせず半額の時給を手にできるという仕組みです。これなら従業員さんから一定の理解を得やすくなります。
しかし、コスト削減の意識が強くなりすぎない様、注意は必要です。人件費削減に注力するあまりサービス品質が落ちると、結果的に売上減少へとつながる恐れがあります。
「適正人数で最大のパフォーマンスを発揮する」体制づくりが大切です。
(3) 光熱費の節約
飲食店の場合、厨房での調理や空調などで電気・ガス・水道を多く使用するため、光熱費が高くつきがちで、基本的に使用量が多い状況が続くため固定費化しがちです。
売上にかかわらず発生する一定の基本料金の比較見直しだけでなく、消費量を減らす努力によって節約が期待できます。
具体的な節約方法
- 省エネ機器の導入
- 今は飲食店向けの厨房機器や空調機器にも、省エネタイプの製品が色々と出てきました。
厨房機器や空調機器を省エネタイプに切り替えると、長期的には大幅なコストダウンが見込めます。
- 今は飲食店向けの厨房機器や空調機器にも、省エネタイプの製品が色々と出てきました。
- 電力・ガス会社の見直し
- 近年は自由化により複数のプランが存在します。
消費量や時間帯に合ったプランを、複数社比較検討のうえ選ぶことで料金が下がる可能性があります。
- 近年は自由化により複数のプランが存在します。
- 定期的な機器メンテナンスとマメな節約
- フィルターの掃除や設備の点検を怠ると、無駄なエネルギー消費や故障リスクが高まります。また、水道光熱費のほか一般経費に関するコスト削減の大原則は「マメな節約」です。
耳に痛い点かもしれませんが、私が役員を務めていた1店舗あたり月商400万円ほどのチェーン店において、節約意識の低い店と高い店の光熱費を比べると月10万円を超える差が、毎月生じていました。
- フィルターの掃除や設備の点検を怠ると、無駄なエネルギー消費や故障リスクが高まります。また、水道光熱費のほか一般経費に関するコスト削減の大原則は「マメな節約」です。
どこまで投資をするかの判断
◆ イニシャルコストとランニングコストのバランス
例えば、省エネ機器に買い替えるための初期費用(イニシャルコスト)が高額であっても、ランニングコスト削減が大きければ長期的にはプラスになります。
◆ 最新の省エネ関連の補助金活用
国や自治体が行う省エネ支援制度や補助金が利用できる場合があります。導入費用を抑えるために活用を検討しましょう。
光熱費は日々の小さな意識変革で大きく変わってきます。スタッフ全員が「節約意識」を持つことで、確実にコストが減る可能性が高まります。
まとめ:今すぐ始める固定費削減で安定経営を実現!
飲食店経営において、固定費の最適化は利益確保と持続的成長の基盤づくりに貢献することを、おわかりいただけたでしょうか。
固定費と変動費の正確な把握、家賃交渉、人件費適正化、そして光熱費節約など、各固定費の見直しを着実に実施することで、損益分岐点を下げ、急な売上減少にも耐えられる経営体制を構築していくことが可能になります。
ご自身で取り組めそうなことから順番に、是非実行してみてください。
お店の資金繰りや収支状況が、少しずつ改善に向かうはずです。
経営数値を活用した改善のアプローチ

当社は、現場観察と実務経験に基づくカスタマイズ型のコンサルティングと業務代行を強みとし、単なる帳簿管理に留まらず、経営数値に基づいた戦略的な改善提案で、地元名古屋の飲食店や夫婦経営のお店など、愛知県を中心に中小企業向けの経営支援を行っています。
具体的には、定期的な数値分析やシミュレーションを通じ、以下の点に注力しています。
- 課題となる経営数値の明確化:
- 客観視できる数値・データに基づいて経営課題を明確にします。
既にお店で取れるデータを有効活用し、数値化・データ化する作業も当社で対応いたします。
- 客観視できる数値・データに基づいて経営課題を明確にします。
- 業務プロセスの見直し:
- バックオフィス業務の効率化により、経営判断に必要な情報の収集速度と正確性を向上させます。
- バックオフィス業務の効率化により、経営判断に必要な情報の収集速度と正確性を向上させます。
- 改善プランの提案:
- 各店舗の実情や現場に即した実行可能な改善策を、具体的な数値目標とともに提案します。
「最初の一歩を踏み出せそう」と感じられる、現実的な提案を心がけています。
- 各店舗の実情や現場に即した実行可能な改善策を、具体的な数値目標とともに提案します。
こうした取り組みにより、多くの飲食店経営者から「すぐに実践できる具体策や店の実情に合った提案をしてくれる」と高い評価をいただいております。
【今すぐアクション!】
まずは、当社の【無料相談】をご利用いただき、あなたのお店の現状分析や具体的改善策に関する提案を聞いてみませんか?
- 「ブログで紹介された手法をより詳しく知りたい」
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この様なお問い合わせにも喜んで対応いたします。
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